2019年5月に入会された有限会社エイキ 部長 道林敏明さんにお話を伺いました。
事業内容について
弊社は解体業をメインに、内装解体、アスベスト除去工事、不用品の回収、不動産サービスなどを行っている会社です。昨今深刻な問題になっている地域の空き家に対しては、「空き家レスキュー119番」という取り組みを通じて包括的なアプローチを行なっています。
私はアスベスト除去工事部門を担当しています。
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石綿(アスベスト)は、天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で「せきめん」「いしわた」と呼ばれています。 その繊維が極めて細いため、研磨機、切断機などの施設での使用や飛散しやすい吹付け石綿などの除去等において所要の措置を行わないと石綿が飛散して人が 吸入してしまうおそれがあります。以前はビル等の建築工事において、保温断熱の目的で石綿を吹き付ける作業が行われていましたが、昭和50年に原則禁止されました。その後も、スレート材、ブレーキライニングやブレーキパッド、防音材、断熱材、保温材などで使用されましたが、現在では、原則として製造等が禁止されています。
石綿は、そこにあること自体が直ちに問題なのではなく、飛び散ること、吸い込むことが問題となるため、労働安全衛生法や大気汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律などで予防や飛散防止等が図られています。
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アスベストという素材は建物自体が木造・コンクリート造に関わらず、防炎素材として使われていたため、私達の生活において非常に身近なものでした。床や天井の仕上げ材・外壁塗材、煙突などにも使われていたんですよ。弊社はアスベスト除去工事自社施工に関して県内で1番の実績です。昔はアスベスト除去工事を専門で行う会社も多かったのですが、弊社のように会社の中の部署として行なっているのは珍しいかもしれません。
有限会社エイキとの出会い
私自身はエイキに入社する前、飲食業界におりました。そこから180度違う建設業へと転身したわけですが、実は弊社社長が私の同級生なんです。入社して現在13年目になりますが、当時アスベスト問題が注目され始めたころで、社長の木村に「アスベスト除去の技術がこれから必要になる。一緒にやってみないか?」と誘われたのがきっかけです。建設業、ましてやアスベストのことなんて何もわからなかったのに、まぁなんとかやれるかなと思って入社しました。
前職の飲食・サービス業だった経験が、今何か役に立っているかと聞かれると、、、んー特に(笑)しいていえば、人との話し方とかですかね。平均年齢は30代が中心で、比較的若い会社です。組織づくりという面では、私自身の経験も踏まえて考えると、一昔前までは働く側の方がどちらかというと選ばれる側として弱い立場だったと思いますが、今は売り手市場なので、どうしても雇用する側の方が立場が弱い。時代が変わったから仕方ないとは思いますが、組織づくりについては課題を感じています。ただ、若手も多い中、ありがたいことに創業者である木村社長と、他にも現場を知り尽くした創業メンバーがおりますので、頼れる存在のおかげで社内環境は良好だと思います。
仕事のやりがいと魅力、大切にしていること
アスベストについて言えば、お客様から「綺麗にしてもらってありがとう」と言っていただけることこそがやりがいです。富山県、北陸だけでなく、滋賀などからも仕事の依頼があります。おかげさまで、これまで全てのお客様から「エイキさんにやってもらってよかった、頼んでよかった」とおっしゃっていただけていることが私達の誇りです。
皆さん「アスベスト=健康被害」というイメージですよね。安心・安全に工事を行うことは当たり前のことですが、近隣住民の方の健康を第一に意識しながら、知識と想像力を駆使して、私たちは施工前のアスベスト確認作業から絶対に手を抜きません。
平成18年9月に労働安全衛生法が改正され、アスベストが全面使用禁止になりましたので、平成18年9月以降に建てられた建物には使われないことになっています。しかしここで注意しなければならないのが、天井や床などだけでなく、例えばボイラーなどにも使われているため、ボイラーの製造年月日などを確認せず壊してしまうと、飛散につながってしまうんです。こういうところにはありそうだなとか、この壁の間はどうなっているのかなとか、危険を察知するためにはやはり知識と経験と想像力が求められる仕事です。
事前調査を行い、分析を行い、計画を立て、準備をし、解体工事アスベスト除去工事に取り掛かります。私は調査・施工管理を行い、実際に除去作業を行っているメンバーは10人おります。工期は現場によってバラバラですが、建てる方の職人さんとは違って、私達の工期は融通をきかせてもらえないことがあります。恐らく解体という仕事がまだまだ簡単に見られているところがあるのかな。一部の知識のない、いい加減な業者さんのせいで飛散事故などが起こったり、また、解体=破壊作業という見方をされ、やんちゃな人がやる仕事という風にとらえられたり。そんなのは間違ったイメージだということを、私たちが姿勢として見せていくことで、業界全体のイメージを少しでも良くしていきたいです。
アスベスト除去工事にあたって、「吸わない・漏らさない・持ち出さない」という3原則を大切にしています。まず「吸わない」というのは作業員が安心安全に働ける労働環境であること。アスベストは吸い込んでから実際身体に影響が出始めるのは30年後とも言われています。現在の健康だけでなく、遠い未来までを守るという思いを込めています。「漏らさない」というのは、近隣住民さんへ絶対にご迷惑をかけない、守りたいという思いです。「持ち出さない」というのは、防護服の管理や作業着・道具・車などへの付着防止を徹底し、作業員の家族や職場の仲間の安全を守るという思いです。
アスベスト除去工事のピークが2030年までと言われているのですが、それは誰が見てもわかりやすい、吹き付け材などが無くなることを指しています。それから先は、より細かな部分にニーズがうまれ、より一層知識と経験が問われる時代に入っていくと考えています。アスベストの事前調査はまだまだ当分は人の分野です。一応、調査機械もあるのですが、どこにどんな厚みや種類のアスベストがあるかどうかはわからず、単純に有るか無いかしかわからないため、現時点では弊社では使用しておりません。単純なのに値段高いし(笑)
仲間を思いやり、応援し合える組織づくり~伝わるまで言い続ける
同友会に入会したきっかけは、社長からすすめられたからです。社長自身も以前同友会会員でした。最初は、「自分は社長じゃないのに行っていいのかな」という不安がありましたし、実は人の集まりが苦手な性格で。。。
ですが、異業種の方のお話を聞けるのは面白いかなと思って参加してみて、実際にとても勉強になります。経営者の生の経験談が聞ける機会ってなかなか無いですよ。
これからは社内において組織づくりや社員教育にも関わっていきたいと考えています。昔は人と人との濃いつながりがあって、先輩後輩という関係の中にすっと入っていきやすかった。時代は変わって、今は仕事とプライベートはきっちりと切り分ける風潮になってしまっていると感じています。
私たちの現場ではマスクで顔を覆っているので、お互いの表情が見えない中作業をしています。そういう時一番大切になってくるのが「仲間同士、気持ちをかけあう」こと。熱中症の初期症状など、気づくのが遅くなると命の危険にもつながります。
社長が富山新庄クラブというサッカーチームの理事長をしていて、サッカー選手の社員がおります。今年も社員みんなで彼を応援しに行ったのですが、みんなの気持ちがひとつになって、すごい盛り上がりました。
うちの部署の作業チームのなかで、一人暮らしをしている子が体調を崩して出社してこなかったことがあるんです。チームの1人がその子の家にまで行って話を聞き、大変だということでそのままその子を病院に連れて行ったということがありました。これは誰かが指示してやったわけではなく、仲間のピンチを察し、自ら考え動いてくれました。
仕事の技術は伝わっても、「仲間を大切にする」ということはなかなか伝わらないものです。そんなことを言って気持ち悪がられたら...と思っていた時期もありますが、今はあえてみんなに言葉にして伝えています。その中で、仲間を応援する、チームを大切にする、というエピソードがでてきて、とても嬉しかったです。
たとえ家族であっても言い方ひとつで問題が起きるぐらいですから、職場の仲間も一緒です。言い方だけが違って、実際にお互いの思いは一緒だったりすることがほとんどです。私自身は若いころそんな風に考えられなかったからこそ、その考え方の大切さがわかります。将来もし会社を辞める方がいても、ずっと仲間でありたい。将来の夢なんて、いつどこで変わるかわかりません。実際私が飲食業をやめてこの業界に飛び込んだんですから。気持ちが次に向いた時、その方の背中を後押しできる環境をつくっていきたいと思います。
(訪問日:2019年9月25日 文:事務局 河崎 写真:事務局 横山)
訪問しての感想
道林さんはアスベストに関する豊富な知識をお持ちで、アスベスト除去・解体工事において、建材以外の用途にも使用されることが多いという特性をよく理解し、何よりも事前によく調査する事が重要だと教えてくださいました。
現場で作業をするチームの安全と同じく、周辺環境や住民の方への影響にも細心の注意をはらい、道具や服装、施工の段取りなどを考えることが道林さんの主なお仕事です。「皆さんアスベスト除去というと"粉塵だらけの危険な現場"というイメージを持たれますが、実際弊社の現場は普段皆さんが暮らしている環境よりもずっと身体と環境に安全な状態を保って作業を行っているんですよ」とのことでした。
危険物でありながら私たちの身近にあって、いざという時だれに頼めばいいのかわからない、確かな仕事を行ってくれるところにしか頼みたくないと思える分野で、「富山で一番の実績があります」という説明にも力が入っており、「壁の中の見えない部分を施工する事もあり、予想外の展開で工期が遅れることもある。けれど、工期が遅れる事を犠牲にしてでも、手を抜かずにやり遂げることがモットーです」とのお話しも、道林さんの「安全」への並々ならぬ情熱と誇りが感じられました。
(感想:事務局 横山)