城南支部
成伯 将史 会員
事務局が企業訪問してきました
玄関先に消火栓と井戸のある会社、それが株式会社ナリキです。そのナリキに成伯将司専務を訪ねました。
同社は今から63年前に専務の祖父に当たる成伯成作氏が鑿泉(井戸堀り)を中心業務とする成伯鑿泉工業所として創業しました。鑿泉については長年の技術の蓄積があり、狭いところでも井戸を洗浄する優れた技術なども開発していますが、最近の業務と売り上げの中心は井戸水を用いて冬の雪を溶かす消雪装置に関することです。道路の中に管を埋め、掘った井戸水をポンプで送り出す必要があります。ナリキの工事のお陰で大雪の朝でも快適に車を走らせることができるわけです。
得意技を活かす
せっかく利用できるようにした井戸水を災害のときに生かせないかという考えから、消雪装置用の地下水を飲料水とすべく給水装置を、また消防のために消火栓を取り付け、富山市内の6町内の9か所にシステムを設置しマスコミでも報道されました。
グッドアイデアはこれだけではありません。消雪装置の遠隔監視システムを作ることにより、雪が降っても水が出ないときや雪が雨に変わったときにも、必要な操作や工事を迅速にできるようになり、住民の満足度を高めました。
その分、遠隔操作のための大型ディスプレイ装置が置かれているナリキ社内では、降雪が予想される前夜から社員が泊まり込み、装置の作動状況を監視することになります。さらに、"技術のナリキ"は自社で制御盤を作り、消雪装置の低負荷運転や周波数制御、電流制御のできるインバーター装置の導入により電力コストを大幅に削減することに成功しました。
きめ細かな遠隔操作と制御情報をEメールで送信できる方法を開発することによっても節水効果とコスト削減を実現し、平成19年にはモバイル中小企業賞という誉れ高い賞を受けられました。一体ナリキはどこまで発展するのでしょうか。
危機感を成長の糧に
しかし、大きな目を開いて情熱的に語る将史専務も、昨今の深刻な不景気に対する危機感を隠しません。しかも、消雪装置は地球温暖化の影響も直に受けるので、5年10年先にどうなるかは誰にも分かりません。
従業員22人の小規模の会社ですが、技術者が6人おり、開発力を支えています。専務自身、土木施工管理、さく井、給水装置工事等に関する国家資格を持っています。技術の社員の営業に対する意識も高いとのことです。
厳しい経営環境の中、どこに活路を求めていくのかという質問に対しては、「失敗したらごめんなさいと謝って工事をやり直す正直さが絶対必要です。失敗して逃げたらその先はありません。苦しくても正直に徹してこそ信頼を得ることができます。そして、営業力と技術があれば、生き残れるのではないかと思います。」との経験を感じさせることばに、経営に対する真剣さと誠実なお人柄を感じました。