射水支部
伊藤 孝志 会員
伊藤 孝志(2012年入会・射水支部)
939-0274 射水市小島3119-2
TEL: 0766-52-4445 / FAX: 0766-52-5351
業種: 椅子製造及び張り替え
家内工業から、感動の経営へ!
事務局が企業訪問してきました
実直で思いやり溢れる人柄は、支部の垣根を超えてたくさんの方から慕われていらっしゃいます。
誰に対しても本音でまっすぐに向き合って下さるため、まさに「頼れる兄貴」という言葉がぴったり!
そんなイトウ室内株式会社 代表取締役 伊藤孝志さんにお話を伺いました。
中小企業家同友会との出会い
弊社は椅子の修理、張り替えを行っています。僕を入れて6名の会社です。高校の時に父親を病気で亡くしたのですが、その頃にはもう会社を継ぐ決心をしていたため、卒業後すぐ大阪で修行をし、21歳で家へ戻りました。
当時、うちの会社は小さいからとバカにして、「俺は大阪や大手の会社で学んできたんだ」という思いで技術を追い求めるあまり、「家に戻ってきたあんまが急に大きな顔をして・・」と社員達から疎まれるような存在でした。
それでもとにかく仕事だけはあったので、当時代表である母親のサポートもあり、35歳まで仕事はなんとかこなしていました。
私は高校を卒業してからもずっと柔道を教えていたのですが、柔道のつながりで、2017年に亡くなられためぐみ環境の竹内さんと出会い、よく竹内さんの会社に行っては自社のグチを話していました。ある時竹内さんから「あんたこんなん知っとるけ?」と言われ、渡されたのが"人を生かす経営"の冊子でした。もともと勉強が嫌いだったんで、なんやこれ?と懐疑的だったことを覚えています。
その2日後、竹内さんから例会に誘われ、まぁ話しだけ聞いて帰ればいいやと思って参加したところ、その例会に、偶然、昔お世話になった高岡支部の向井さんがおられ、向井さんの勧めもあってそのまま入会することになりました。
"経営指針を創る会"を受講して
旧・呉西支部が主催する経営理念塾も、向井さんのすすめで受講しました。でもうちは家族経営。「理念だ方針だなんて、そんなもん...」という気持ちがあり、まったく身が入りませんでした。それでもなんとかできた理念を一応会社に張り出してみたのですが、結局誰が見るともなく、そのままほったらかしになってしまいました。
2017年に第22期経営指針を創る会の受講を決めたとき、ちょうど射水に新支部をつくることが重なり、今思えば被害妄想なんですけど、「全部自分のところにまわってくる」という思いがありました。被害者のような顔をして、課題をこなしていました。
ある時、助言者から「もし椅子がなくなったらどうする?」と聞かれ、「そんなもん、無くなるわけなかろう」と内心思いました。その時は質問の真意がよくわからなかったんですが、自分はずっと椅子をつくることだけ考えていたため、椅子にまつわる物語を意識していなかったことに後々気がつきました。
私は助言を聞きにいくことが好きだったので、支部関係なく、たくさんの先輩に聞きにいきました。聞くたびに頭がごちゃごちゃにはなるのですが(笑)、本当にいろんな人に助けていただきました。
また、一緒に受講した同期の力にも助けられました。同期は12人おります。その中にはいろんな商売をしている方がいて、その中で一番尊敬している同期は大工さんです。大工さんとは受講中、助言者とのやりとりを振り返ったり、時にはお互いの意見を闘わせたり、そのおかげで自分の考えをより深めることができました。
社員と共に、夢づくりフェスタに出展
受講後、さらに1年かけて経営指針の内容をブラッシュアップし、ようやく経営姿勢と方針を社内で発表することができました。社員の反応は、正直言ってイマイチでした(笑)「へー、社長そんなんすんが、それでわたしら何すればいいが」というような反応です。
若い人を雇いたくても、うちじゃまだ無理かな・・・とずっと諦めていたんですが、2018年8月に19歳の男性社員を採用することに決めました。県内10軒ほどしかない椅子張りの業界で、ほとんどが70代の職人さんばかり。技術だけなら残せても、イトウ室内の"思い"を残すためには、覚悟を決めて採用するしかないと思ったんです。
2018年9月に開催された夢づくりフェスタでは、椅子張りの技術をお客様に体験してもらおうと考えました。技術を教えるのは、私ではなく新入社員の彼にお願いすることにしました。彼が入社してまだ1週間でしたが、フェスタの説明をし、「これから1か月練習して、ブースに来てくれるお客様に教えてあげてね」とだけ伝えました。それから彼は一生懸命僕に質問しにきてくれ、練習を重ねてくれました。
当日、体験ブースに来てくれたのはほとんどが小学生。子ども達に向けて、懇切丁寧に説明しながら、一生懸命頑張ってくれました。おかげでブースは予想以上に大盛況!当初用意していた材料もすぐに売りきれたほどです。
後日会社に電話がかかってきて「椅子張り体験がすごく楽しかった。どこか富山市の学童で体験させていただけないか」というお話を頂きました。このような輪が広がると、椅子職人の仕事をしたいという子ども達が増えるのではないかと思います。
何のために生まれて、何をして生きるのか
僕自身、2017年に創る会を受講した時から、アンパンマンマーチがずっと頭の中に流れています。創る会をきっかけに、『自分は何のために生まれて、何をして生きるのか』を考えるようになりました。この考え方が有るか無いかで、仕事してても前とは全然感覚が違うと思います。僕は人に喜んでもらうために仕事しているのに、また今自分のことばかり考えていなかったかと自問自答するようになりましたね。
取引先との価格交渉についても、これまで自分1人で仕事をしているという感覚だったので、値段なんて下げられるところまで下げていいと思っていました。でも、今は常に社員の顔が浮かぶようになりました。 価格をむやみに下げるということは、一生懸命良いものをつくろうと頑張ってくれている社員達の思いをディスカウントすることになってしまう、みんなの気持ちを踏みにじることになってしまう、こんなに失礼なことはないと気がついたんです。
最近ある取引先からあまりにも無茶な値下げを要求をされ、交渉しても全く聞いてもらえないということがあったんです。覚悟を決めて、「うちではやれません」と断りました。仕事は減ってしまったけど、社員達から拍手をされました。「嫌な仕事でも、やれば終わっていくから」といって、何とかやってくれていた社員達の気持ちが痛いほど伝わってきました。僕はもう社員達にこんな思いをさせてはいけないと強く思いました。同友会に入会していなかったら、こんなこと、ずっと気がつかなかったかもしれません。
これからの夢
経営指針成文化は同友会の1丁目1番地と言われていますが、その通りで、私自身、経営指針書をつくって毎年見直しているおかげで、社員の雇用を考えることができました。これからは、和気あいあいと、みんなで成長しあえる会社にしていきたいと考えています。
みんなで会社の中に共同スペースをつくることになりました。「今は自分の作業場で休憩したりお昼ご飯を食べたりしているけど、みんなで一緒に休める場所があればいいな。それに今後若い社員が入ってきたときのために、コミュニケーションスペースがあった方がいい」という社員達からの意見です。しかも、忙しい中なんとかみんなで時間をつくって、自分達の手で作ろう!と言ってくれて、少しづつ実行に移しています。
また、自社の事業領域が明確になったおかげで、椅子張りの技術を活かせる分野とコラボして、今後は医療関係やスポーツ関係にも挑戦していきたいと考えています。特に、僕自身がずっと続けてきた柔道に対して恩返しをしたいです。柔道をがんばる子ども達の笑顔のために、彼ら彼女らが安心安全に柔道に打ち込めるよう、弊社の技術がどんな風に貢献できるかを模索しています。
最後に
昨年氷見支部例会にて、初めて経営体験報告をされた伊藤さん。例会にはなんと50名を超える参加者が!!
いつも周りのことを考えて私達を笑顔にして下さる伊藤さんですが、私はその時の報告で初めて伊藤さんの葛藤を知り、人を笑顔にできる人は、誰よりも痛みを知っている人なんだと教えて頂きました。
お忙しいところ貴重なお時間をありがとうございました!これからも心の兄貴でいてくださいね!
(訪問日:2019年1月31日(木) 文:事務局 河崎)