となみ野支部
下津佐 雅之 会員
下津佐 雅之(2011年入会・となみ野支部)
株式会社フォー・シーズン・ズ 代表取締役
〒939-1104 高岡市戸出町3丁目23番77号
TEL: 0766-63-5039 / FAX: 0766-63-6440
業種: 8番らーめん(フランチャイズ)、ビジネスサポート事業
事業承継、創業者の思いと歴史を繋ぐということ
事務局が企業訪問してきました
小さいころは家族みんなで。学生のころは友達と。社会人になって新しい家族、年を重ねた両親と。世代を超えて愛される8番らーめん。
株式会社フォー・シーズン・ズは8番らーめんフランチャイジーとして、福光店、砺波店、戸出店、赤祖父店、高岡熊野店、羽根店、佐野店の7店舗を運営し、その他ビジネスサポート事業なども行なっています。
同社事務所は 8番らーめん戸出店に隣接しており、2018年4月に店舗と事務所がリニューアルされました。「リニューアルには同友会のたくさんの仲間が関わってくれたんです。」と嬉しそうにお話ししてくださるのは代表取締役社長 下津佐雅之さん。
下津佐さんは2017年2月に第3者承継の形で、前社長・現会長である近江清さん(富山県中小企業家同友会代表理事)から経営のバトンを受け取りました。今回は事業承継に至るまでの経緯と、これからのビジョンについてお話しをお聞きしました。
会社沿革
1972年に近江初郎(近江会長の父)が8番らーめん戸出店を創業し、1987年に有限会社オオミを設立しました。1994年に近江が社長に就任したと同時に、有限会社フォーシーズンズに社名を変更しました。株式会社になったのはちょうど2000年のときで、その次の年の2001年に私が入社しました。近江が同友会に入会したのも同じく2001年です。
創業からずっと戸出店の2階に事務所を構え、事務所のリニューアル案は社長になる前から心の中にありました。近江家で続いていた会社を、創業45年目にして社員である私が継ぐことになり、今後100年続く会社を思い描いて、リニューアルしました。この応接間は人と人とがつながる場所。仕事終わりに社員たちとここでお酒を飲むこともありますよ。
(応接間には温もりを感じる立派な一枚板のテーブルと、自然と会話が弾む優しい座り心地のソファーが。床や壁紙の色合いも落ち着いたブラウンで統一されていて、応接間によくあるビジネスライクな雰囲気ではなく、まさにおもてなしの心が感じられる、居心地最高の空間です!)
フォー・シーズン・ズとの出会い
僕が会社に入ったのは31歳のときです。20代からずっと飲食関係の仕事をしていました。僕自身は県外出身者で、たまたま縁があって富山で仕事を探していたときに、フォー・シーズン・ズの求人をみつけ、面接を受けました。
面接をしてくれたのが当時社長である近江で、面接の時に「うちに来なよ」と声をかけていただき、トントン拍子で入社が決まりました。「ついでに住居も借りてあげようか?」とまで言ってもらえたのですが、「いえいえ、そこまでお世話にはなれませんので」と遠慮しつつも、初対面でそこまで言われるとなんかちょっと怖くないですか(笑)??まぁ結果その予感は的中し、入社してみると、いわゆるブラック企業だったんですよね(笑)
入社して1ヶ月で店長をやり、そのあとすぐ24時間営業の経験もしました。勤務時間が1番長い時で時計の針が3周したこともあるぐらい、労働環境は過酷でした。当然社員はどんどん辞めていき、経営状態も落ち込んでいました。極めつけは、当時社長の右腕だった役員の退職だったと思います。
そんな中で、自分は役職もついていたのですが、なぜ続けてこられたのか不思議なぐらいでした。ある時、いつもポジティブでエネルギーの高い社長が、いつになく真剣な顔をして「会社を立て直したい」と僕に相談してくれたんです。
周りが退職していく中で、僕なりにみんなを守りたいという思いはありましたが、自分だけの力ではどうしようもないと思い、会社に見切りをつけようと思っていた矢先のことでした。2005年ぐらいだったと思いますが、社長から相談を受け、その時何を間違ったか「はい、わかりました」と答えてしまったんですよね。
言ったからにはやらねばならん!いばらの道を歩む決意
今から思うと生意気にもほどがあるんですけど、僕はいつも経営会議の中で「こんな会社はおかしい!」と声を大きくしていました。いつでも辞められるという気持ちがあったからこそ生意気なことばっかり言っていたんだと思います。しかし「立て直したい」「はい!」と言ってしまったからには、もう無責任なことはできない。言ったからにはやらねばならんという気持ちになりました。
それから社長と僕との二人三脚が始まりました。それまでもお互い本気でぶつかり合っていたと思いますが、いよいよお互いに逃げられないという覚悟で、がむしゃらに改革を進めていきました。
まずはコスト面の圧縮から始めていきました。「社長!売り上げがほしいんですか?利益がほしいんですか?」と質問をすると、「もちろん利益だ!」という返答でしたので、「じゃあ利益がでる仕組み・体質に変えていくところからですね」という話し合いをしたのを覚えています。
社内環境も同時に整えていきました。一緒に働く人達の"働きがい"がなければ、会社はつまらないものになってしまいます。
最初に取り組んだのは経営方針発表会と社内行事の納涼祭です。2004年に行った第1回目の経営方針発表会は、なんのこっちゃら?という感触で、まったくもって理念の浸透とは程遠い発表会でしたが、毎年続けています。納涼祭ももう15年ほど続いていて、その日は店を早く閉めて行なっています。ちなみに僕も得意の鉄板焼きを振舞ってます。店を早く閉めるにあたり、僕たちはフランチャイズなので本部に申請をし許可が必要になりますが、本部からもこういった取り組みを後押ししてくれています。
2014年からは念願の社員研修旅行をスタートさせることができました。社員だけでなく、いつもお店を支えてくれているパート・アルバイトのみんなもバスに乗り込んで、朝からビールを飲むんです。本当にみんな喜んでくれました。次の夢は、みんなで海外に行くことです!
創業者の思いと歴史を繋ぐということ
僕は、人を喜ばせる仕事をしている人達自身が心から楽しむことが何より大切だと考えています。僕はもともとフリーのホテルマンをやっていました。やっぱり人の笑顔を見ることが好きなんですね。笑顔の輪の中に自分がいることが僕の幸せです。ラーメン屋をやりたいわけじゃなかったんですが、ある意味この会社と出会えたのは運命的だと思っています。
2011年に創業39周年・設立25周年記念祝賀会を行いました。その時、これまでの会社のあゆみを映像でまとめ、歴代の社員の名前を調べられるだけ調べて載せました。たった2人の夫婦が興した会社が、1000人以上の人達が関わって歴史を繋げてきたことを知り、胸に込み上げてくるものがありました。
創業者である近江初郎さんは42歳で創業し、創業時の苦労も社長から聞いておりましたが、初郎さんご夫婦はとても素晴らしい人で、生意気な自分達にもわけへだてなく接してくれる方々でした。いくら生意気なことを言っていても、僕たちはそのお二人と社長が築いてくれたものに乗っかっているだけなんだと強く心に刻みました。
また、会社年表を改めてつくり直した時、たくさんの思い出が蘇ってきました。自分の休みがなかなか取れない時でもチャリティーイベントをやったり、その時その時の自分の気持ちの熱さを思い出して、これからもそういう気持ちを大切にしていきたいと思っています。
社員から厳しい意見を言ってもらえる社長になりたい
2016年度に第22期経営指針を創る会を受講し、2017年2月に社長就任しました。
2008年に僕と入社1年しか違わない方が役員に入ってくれたことで、一気に社内改善が進みました。社員の年齢は40代が中心で、僕が持ってない知識や能力を持っている人達ばかりです。
社内の雰囲気は「仲が良い」ですが、見方を変えると、まだまだ「他人頼りの姿勢」になっているところがこれからの課題です。部活とかをイメージしてもらうとわかりやすいのですが、何か良いアイデアが出て、よしやろう!となっても、「俺しますよ」とか、「俺ならこうします」という意見がなかなか出ないんですよね。
社員からは「社長は考え抜いてものを言う人だから、社長が言うことに対して別に何も言うことはない」と言われてしまうことがあります。僕はせっかちなところがあるので、結論を急いでしまうところがある。「それは人間の器の大きさの問題だ」と近江会長からはいつも怒られています。今はそこを努力してなおそうとしている最中です。会長はそういうことを、一緒にタバコを吸っている時なんかにちょこっと言ってくれるので、有り難いですね。もっともっと社員から厳しい意見を言ってもらえる社長になりたいと思います。
100年愛される企業を目指して
「フォー・シーズン・ズは近江さんの会社」と今でも言われますよ。そこにムキになったりはしません。社長になって3年、社風づくりや営業に関しては社長として少しずつ自分のカラーが出ているとは思いますが、周りからはまだまだだと言われています。創業者の思い、会長の思いをしっかりと受け継ぎ、これからもチーム一丸となって歴史をつないでいきたいという思いです。
僕が社長になると決めた時から、もう次のバトンを渡すことを意識しています。実体験から思うことですが、いきあたりばったりの事業承継はだめ(笑)!
今は飲食店を中心とした事業で、2次産業とも連携した仕事にも取り組んでいますが、これからは1次産業にも着手していきたいと考えています。弊社は100年企業を目指しており、現在平均年齢41歳の社員たちが20年後、30年後に年齢のせいで仕事が無くなるのは理念に反してしまいます。
定年退職が無くなる時代に、障がいのある方や高齢者の方も雇用でき、また、そういう方々のコミュニティとなるような仕事をつくりたいと考えています。そのためには社員みんながマネジメントを学ぶことで、リーダーになっていってもらいたいです。
フォー・シーズン・ズと出会えてよかった。近江会長と出会えてよかった。感性が違う人と出会うことで、人間の脳は形が変わるそうです。ギスギスとした性格だった私に、感謝とは何かを教えていただきました。会長のことを経営者としてはあんまり尊敬していないけど(笑)、人としては心から尊敬しています。経営指針を創る会を受講した時に、「中小企業経営者は人としての魅力が伴わないといけない」と助言者の方から言われました。自分もいつか、会長や会長のご両親のような人間になれるよう、これからも精進していきたいと思っています。
(訪問日:2019年3月15日 文:事務局 河崎)
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