新川支部
児玉 巧 会員
児玉 巧(2019年入会・新川支部)
感じる心を育み、自由な発想で誰かの役に立てる人に育ってもらいたい
南加積保育園の保育理念
地域に根ざした愛情豊かな保育を継続します
事務局が企業訪問してきました
2019年9月に入会された、社会福祉法人光南会 理事長 児玉巧さん(新川支部)。上市町の町立保育園、南加積保育園を運営されています。保育園の玄関を開けるなり、とっても爽やかな笑顔で私達を迎えて下さった児玉理事長。園児たちに負けない元気と熱量で、子ども達の未来づくりを語ってくださいました!
南加積保育園について
現在42名の園児が通っています。縦割り保育といって、年齢の異なる子ども達が一緒の教室で生活するという形で運営しています。年上の子が年下の子の面倒をみることで、お互いを思いやる優しい心が育まれる環境になっています。
現在園長含め職員が2名、町役場から来てくださっている方が2名おります。
もともと町立の保育園だったのですが、3年前に民営化されました。縁あって民営化の際に理事長を務めることになったのですが、もともと私は保育の仕事に携わっていたわけではありません。もともとは、様々な体育教室を行う「体育の家庭教師 スタジオじゆう」を運営するNPO法人を立ち上げ活動しており、現在も続けています。
保育未経験から保育園の理事長に
ここがまだ町立の保育園だった時に、私の息子が通っておりました。父母の会執行部で次の会長を決める際、代理参加した妻が見事「会長」くじを引き当ててきたことが全ての始まりです。
父母の会会長になり半年が経った頃、上市町役場の福祉課さんから、突然保育園民営化の話を聞かされました。
民営化には最初反対だったんですが、あれやこれやと色んな方から色んな話を聞くうちに、いつの間にか民営化を進める立場になってしまいまして(笑)
「どんな保育園にしていくのか、地域の要望にあったプレゼンをしないと、どんなに良いことを言っても取り合ってもらえないよ」というアドバイスを頂きました。そこで地域の方の要望をできる限りヒアリングしました。そこから見えてきたのは、「町立の保育園が大切にしてきたものをそのまま引き継いでほしい」という皆さんの強い気持ちです。
そこからどんどん物事が動き始め、社会福祉法人という形で民営化にすることができました。個人的にお世話になっている方達からの寄付を頂いたり、もともと町立の保育園に務めておられて定年になられた方が、今度は園長という立場で戻ってきてくださったり。
右も左もわからず、ただ「やる気はあります!」と言ってただけの私に、たくさんの方が力を貸してくださり、ここまで来ることができました。それがもう3年前のことです。
立場ではなく、役割が大事
人間は、"変わるもの"と"変わらないもの"で構成されていると思います。いつの時代にも「今時の若いものは」というつぶやきがあるように、ジェネレーションギャップは必ず起こります。ですが、変わらないもの、つまり人間的な本質に世代は関係ないということに、保育に携わるようになって初めて気付かされました。
私はいきなり保育園の理事長になったので、自分が保育歴0年目だという自覚があります。園長や職員はみんなベテランばかり。保育のことを何もわからない自分は、施設運営のことだけ考えようと、職員の皆さんとは一線を引くような雰囲気をつくってしまっていました。
それが、本当に昨日のことなんですけど、定例会の場で「これからはみんなで一緒にやっていきましょう!」という話ができるまでに自分自身が変わってきました。
きっかけは、ティール組織について書かれた書籍を読んだことです。これを簡単に言うと、自ら目的を持ち自主的に創意工夫し成長する組織づくりのことです。
昨日の会議でも話をしたのですが、これからは「役職」から「役割」へ変えていきたいと思っています。自分のことで例を言えば、月2回の定例会議には基本的に理事長は参加しない方針でした。ただ、理事長と事務長を兼務しているので、事務長という立場で会議に参加したことはありました。これも今考えると「役職」に縛られて行動していたことで、これまでは経営側としてみんなと一線を引いていたことも、間違っていたことに気がつきました。
ワクワク感で動く!!
町立のころからしっかりとした就業規則があり管理はされていたのですが、職員は本来管理される側ではなく、保育士としての専門性にプラスして経営感覚も必要だと考えています。
今経営感覚と言いましたが、これも上から目線の言葉でしたね。組織を個人としての見方、全体としての見方としてとらえるのではなく、一人一人の集まりが全体であるというように考えるよう、心がけています。理事長としての私が組織を見るのではなく、私も組織を構成する一人なんだという視点から、自分に与えられた役割を考えるようになりました。まさに地に足がついた感覚です。
"変わらないもの"に意識を集中すると、これまでの私は闇雲に理論武装をしていたことに気が付きました。見えない何かと戦っていたという感覚でしょうか。理論武装のため本もたくさん読みましたが、いつか誰かに「君、これを読みたまえ」なんてエラソーに言える日が来ることを期待していたんでしょうね(笑)
一人一人が柔軟にアイデアを出し、とにかくやってみよう!という職場を目指しています。お互いを認め合い、お互いに自己研鑽ができる環境が理想です。そのためには何よりも自分自身がたくさんの人に会い、話を聞き、己を磨いていきたいと思っています。
もしこのインタビューが昨日の会議の前であれば、「根拠は...」とか「こうあるべき」とか、もっとカッコイイことを話そうとしていたかもしれません(笑)職員みんなに思いを伝えられた今、私を突き動かすのは義務感とか見栄とかじゃなくて「ワクワク感」しかない!!!まさに私の中の幼いころの自分が今の自分を動かしているようです。
(「この壁、私が塗ったんですよ~」「外の柱もです~」「園の周りの大きな木も自分で剪定しました~」と、キラッキラの笑顔で教えてくださった児玉さん。その笑顔から、理事長としての立場ではなく、子ども達の未来づくりのために与えられたご自分の役割として行動された結果だということが、しっかりと伝わってきました。)
保育の役割~愛情は成長の養分~
保育というのは、教育の導入段階、教育の素地を育成するためのものととらえられがちですが、もっと大切な役割があると思います。
物心つく前の人間として最もまっさらな時期に、しっかりと愛情を受け取ったかそうでないかで収入に大きな違いがあるという研究結果があるくらいです。それぐらい大切な時期に、理解のある人たちに囲まれ、愛情たっぷりに生活することで、その後の成長に必ず良い影響があると思います。なぜなら、愛情は成長の養分ですから。これからこの子がどんな大人になっていくのか、ある程度方向性が見える保育という現場はとても尊いものだと感じています。
保育園は地域の中で見守られ、育まれていきます。子ども達と私達職員は、地域の皆さんから知恵や経験を学び、多様性の中で子どもたちの価値観が磨かれていくと思っています。
これからは職業選択自由の時代です。制約で子ども達をしばるのではなく、感じる心を育み、自由な発想で誰かの役に立てる人に育ってもらいたい。そして、大人の大切な役割として「テレビに映る出来事を、他人事ではなく自分事と感じられる心づくり」を伝えていきたいです。
(訪問日:2019年12月17日(火) 文:事務局 河崎 写真:事務局 横山)
最後に
児玉さんは、地域の方からの信頼と、それに応えられる保育を考えていく中で、「保育がその人の一生を決定づける根幹の部分にあり、その後の人生で、地域で生活、活動していくことまで見通して考えると、保育は地域づくりの側面も持っている」と確信され、事業の充実が地域づくりにつながるというお話を聞くことができました。
そういった中で、児玉さんが事業の中で大切にしていることは、ワクワク感を持った職場の雰囲気作りで、自身のビジョンを職員の方と共有したり、保育の現場では子供たちひとりひとりがそれぞれに価値観を持っていて、それを受け入れられる広い地盤をつくりたい、という想いを持っておられ、職場だけでなく、地域全体にも向いていることが、地域全体が明るくなるような保育園の運営に繋がるのだと考えられています。
地域の活性化に保育という立場から取り組まれている児玉さんのお話は、職業としての保育の枠組みを超えた可能性を感じ、中小企業家同友会が目指す地域づくりと重ねて学ぶことが出来ました。
(感想:事務局 横山)