となみ野支部
伏木 満広 会員
伏木 満広(2011年入会・となみ野支部)
時代の荒波を志で乗りこなせ!若き建具職人の挑戦
創業65年、砺波市庄川町にあるオーダー建具を中心とした木工製作会社です。
株式会社フシキでは建具を中心とした製作事業を展開しております。
木製建具の製造販売をはじめ、襖、障子、ドア、戸、窓の製作、貼り替えを承っております。
事務局が企業訪問してきました
富山同友会青年部会には40歳までの若き経営者、次世代を担う後継者や幹部社員の方が所属されています。
「同友会の青年部会ってどんな活動をしているの?」「どんな人たちが参加しているの?」という質問にお答えして、青年部会で活躍されるリーダー達をご紹介していきたいと思います!
庄川町はかつて庄川の流れに乗って飛騨高山から運ばれてきた木材の一大集積地として栄え、その木材を利用した木材加工技術が様々な形で今に受け継がれている伝統ある工芸の町です。
庄川町にある木製建具の製造を行っている株式会社フシキ 取締役専務の伏木満広さんは2011年に同友会入会。全国的に新設住宅着工戸数が減り続け、歯止めがかからない人口減少、そして2025年問題が目前に迫る中、建設業界に連なる木製建具業界は今後どのような展望を描き、どのようにこの難局に立ち向かっていくのか、お話を伺いました。
会社概要
建具を中心とした製作事業を展開しております。木製建具の製造販売をはじめ、襖、障子、ドア、戸、窓の製作、貼り替えなどです。1953年に私の祖父が創業しました。祖父から父へ、父から叔父へと受け継がれ、現在は父が会長、叔父が社長を務めています。
業界の展望については、強い危機感を感じています。3代続く弊社ですが、それぞれの代で世の中は大きく変化し、その時代の流れに合わせて事業形態を少しずつ変化させてきました。
私自身は専務という立場ですが、今後、事業をただ継げばいいとは思っていません。第2創業のような気持ちで、新たに挑戦する姿勢を心がけています。自社だけではできなかった仕事も、若手の職人仲間と組んでガラスをはめ込んだ家具づくりに取り組んだり、ソファーの張替えなどを行ったりと、連携の力で挑戦しています。
株式会社フシキの歩み
祖父が創業した頃は、木製パレットが主力製品だったと聞いています。他には、パルプ工場で使われるろ過装置が昔木製だったそうで、そのような特殊な製品も取り扱っていました。頼まれたら障子などを作るといった感じで、建具が占める割合はごくごく僅かでした。
祖父は職人としての技術を磨き続け、平成17年に黄綬褒章を受賞しました。本格的に建具製造に乗り出したのは父の代からです。ちょうど時代はバブルを迎え、一般住宅の需要増だけでなく、観光地には旅館・ホテルの建設ラッシュ。社員総出で新潟の湯沢に納品しに行ったと聞いています。その頃子どもだった私も、なんとなくですが、当時の会社の賑わいは覚えていますよ。
とはいえ、今現在売上げが落ち込み続けているかというと、そうではありません。バブルの頃の売り上げをピークとして確かに減少してはいましたが、現在は少し上昇傾向にあります。
ニーズの変化にいち早く対応する
上昇傾向になってきた理由として、「施主さんのマイホームへのこだわりをどれだけ形にできるか」という建築業界のニーズがあります。家を建てるのは、まず予算ありきです。予算を組む中で、一番重要視されるのは断熱材など機能面へのコストです。どうしても建具は二の次になってしまうのが業界の常識でした。
しかし、最近は機能性に加えて、こだわりあるマイホームを建てたいと願う施主さんが増えています。そこで、オーダーメイドで対応できる弊社を選んでくださる取引先が少しずつ増えてきました。
新築でもリフォームでも、建具ひとつで家の雰囲気はガラッと変わります。そんな建具の魅力に気付いて下さる方が増えていることはとても嬉しいですね。
オーダーメイドでの建具づくりにこだわり、設計士さんのイメージを形にするためこちらからデザインを提案することもあります。フローリング材をドアに使って空間の一体感を演出したり、空洞形状のポリカーボネイト板の穴に細く加工した木材を差し込み、軽量化とデザイン性を兼ね備えた新しい建具を考案したり。アイデア次第で可能性は無限大です。
セレブの方が集うサロンに納めるヴィクトリア様式のもの、わざと使い古した感じがでるように加工したアンティーク風のもの、キャラクターデザインを施したもの等々、お客様のニーズが非常に幅広く多様化していることを日々実感しています。
多様化に対応していくためには色んな分野の色んな知識と技術が必要になるため、大変な道のりではありますが、反対にとてもやりがいを感じています。
時代の先を見て動く
私はこの道に入って今年で20年目になります。もともと、いつか会社を継ぐという意識は漠然とありましたが、それ以前にモノづくりが大好きだったんです。小さい頃からよく家の手伝いをしていて、と言っても遊んでいたようなものですけど、単純にその時の楽しかった思い出が今もずっと残っているというか。
この会社に入る前、別の建具会社で5年半見習いとして働かせていただいた経験があります。
そこで初めて仕事は厳しいものだと知りました。お世話になった見習い先の会社は、建具技術が国に認められるほどの会社で、たくさんのことを学びました。
5年半の経験を積んで、会社に戻ってみると、これまた全然仕事のやり方が違っていて、正直とても戸惑いました。何が違うかというと、弊社は当時から機械化を進めており、まずそこで会社から求められる作業スピードに全然ついていけなかったんです。
手作業でひとつひとつの工程を全て一人が担当するのではなく、機械と手作業とに分けて考えながら、それぞれ並行して数人で工程を組み立てていかなければならず、上手くできない自分にもどかしさが募りました。
その経験から、今では何でも同時進行で考えることができるようになりましたし、機械を取り入れた流れ作業ができるおかげで、性別年齢に関わらずどなたでも仕事ができるような仕組みになっています。これも、時代の変化に合わせて会社を変化させてきた先代達のおかげです。
近年では、職人仕事だけではなく、事務仕事もやらなければならなくなってきたことや、パソコン・スマホなどのツールを活用した情報共有が普通になってきたことが大きな時代の変化だと感じています。
例えば、これまでは職人が建具をつくって現場に納品するだけ、あとは事務担当が請求書を送るだけだったところを、職人も現場に関係する全ての業者さんと情報共有しながら進めるように変わってきました。
住宅施工進捗状況をスマホアプリで全業者が閲覧できるようになっていて、建具のサイズや現場の収まりについてリアルタイムに問い合わせがきたり、要望が上がってきたり。便利になった分、こちらの休みに関係なくいつでも連絡がくるのがつらいところなんですけど、私達の仕事は全体工程の後半に位置するため、工期が厳しいとそこに合わせた緊急対応が求められます。誰かが帳尻を合わせるしかない!と腹をくくって頑張っています。
モノづくりの魅力について
なんといっても、お客様が喜んで下さることですね!
妻と結婚する時に、関係業者さんに結婚式の日取りとハネムーンの日取りを書いて「この日からこの日まで動けません」とFAXで送ったんです。そしたら、ありがたいことに業者さんからの返信FAXには、結婚式前日までびっちりと取り付けの予定が書かれてありました・・・(笑)
ですので当然結婚式前の準備は全て嫁任せで、結婚式前夜も夜中の1時まで仕事をしていました。結婚式のあと、夜中1時までかかって仕上げた美容室を訪れると、オーナーさんのお子さんから「ママの美容室、いいがにしてくれてありがとう!」という言葉をかけていただき、それを聞いて泣きそうに感動しました。式当日眠そうにしていたことを妻はまだ許してくれないんですけど(笑)、本当に思い出深い経験です。
同友会と青年部で何を学んだか
となみ野支部の大先輩、(株)木香美・服部の服部さんもよくおっしゃっていますが、同友会の「頼まれごとは試されごと」という言葉に背中を押されてきました。
考えて考えてきっちりと計画立ててやってみても、結局その通りにならないことがほとんどです。その場で瞬発的に「はい」か「いいえ」か、判断しなくてはいけない時が必ずあります。そんな時、ムリだと諦めて断るよりも、とにかくやってみてわかることの方が得るものは大きいと思います。だからこそ「頼まれごとは試されごと」という言葉に背中を押してもらって、「はい!わかりました!」と答えることにしています。なるべく(笑)
同友会には2011年に入会しました。入会のきっかけは(株)フォー・シーズン・ズの近江さんです。商工会議所青年部の例会で、近江さんが報告された内容を聞いて、衝撃を受けました。「十年後の自分はどうなっているかわかりますか」というテーマだったと思います。
その報告の最後に中小企業家同友会の紹介があって、「へーそんな会があるんか」と思っていた矢先、なぜかすぐに近江さんと(株)トナミデンタルラボラトリーの黒田さんが同友会のお誘いに来られました(笑)ちょうど、この先どうしていいかわからず悶々としていた時期だったので、この会に入れば何か将来が見えるきっかけになるかなと思い、入会しました。実は、入会については会費のことで会長と社長からは反対されたんですけど、「自分で払うから!」と反対を押し切り入会しました。
入会してすぐに青年部会にも入会しました。新春のつどい実行委員や、北陸青年経営者三県合同例会実行委員などの大役も最初からバンバン仰せつかりましたが、そのおかげで「自分から動く」「できんやろと思うことでもやってみる」という姿勢が身についたと思います。仕事に関しても、以前よりも自分からアクティブに動けるようになったという自覚があります。
これからの夢
喫緊の課題は人材不足です。前に若者と飲みに行った時、「いまどきホームページが無い会社はありえないでしょう、無い時点でパスですよ!」と言われ、ショックを受けました。もちろんすぐにホームページをつくりました。
しかし、人材不足に悩むのは弊社だけではありません、業界全体の課題です。
高校での授業で、学生達と一緒にノコギリを使って建具づくりをやったり、地域で行っている「子どもの家プロジェクト」に参加して、子どもたちと一緒に木製の小屋を組み立てたりなど、若者にモノづくりに興味をもってもらうための活動に取り組んでいます。
自分自身父親の背中を見て育ち、「モノづくりの楽しさ」を身近に感じながら生きてきました。でも、今の時代、そういう仕事にふれたことがない子がほとんど。ご両親がどんな仕事をしているのか知らない子もたくさんいます。
子ども達に興味を持ってもらう活動を通じて、将来うちの会社に入ってもらえるかどうかは置いといて、子ども達が将来を考える時に、モノづくりの仕事を選択肢のひとつに選んでもらえるように、コツコツと種まきをしています。種が芽を出すまでも、10年20年かかるかもしれませんが、業界全体のボトムアップとなればと思って、今後も取り組んでいきたいです。
(訪問日:2020年1月23日(木) 文:事務局 河崎)
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