全県行事

■第２分科会
「地元100年企業のバトンパス」
報告者：角崎 誉栄氏　㈱モリタ　代表取締役社長／富山県中小企業家同友会
    森田 昌孝氏　㈱モリタ　代表取締役会長／富山県中小企業家同友会

今回の分科会では、富山県で長い歴史を持つ株式会社モリタの森田昌孝会長と角崎誉栄社長にご報告していただきました。
㈱モリタは理美容関連商材や機材の販売、経営支援、貸衣装事業などを手掛け、
「私たちは、ビューティーワールドと信頼関係で結ばれる人間美創造企業です」という理念のもと、地域社会と深く結びついている企業です。
今回のテーマは「地元100年企業のバトンパス」

創業家以外への事業承継に挑戦された中でのお二人の経験や想いを語っていただきました。
まず始めに、代表取締役会長の森田氏からご報告いただきました。
森田会長が社長に就任した1998年当時は、外部コンサルタントが作成した理念があったものの、 経営の方向性に確信を持てない状況だったといいます。2001年に「経営指針を創る会」を受講し、自らの理念を形にすることを決意。
その後、2002年に初めて方針発表を行い、会社の未来を描き始めました。
「社長ができないことは社員が補い、社員ができないことは社長が補う」という協力体制を築きました。
この取り組みの中で、社員が若返り、女性社員も増え、組織全体が活性化したと語られました。
また、「愚直に学ぶ」という姿勢を貫いた結果、社員と共に成長する企業文化が育まれたと振り返っています。

2018年頃、事業承継を意識し始めた森田会長は「次の世代にバトンを渡すには世代交代が必要」と考え、角崎氏を後継者に選定。
その理由は「失敗をバネに成長し、社員に近い存在でありながら信頼を得ている人物」だったからです。
2020年に角崎氏へバトンを渡してからは、更に若手社員が成長し、自発的に動ける組織へと変化。
コロナ禍の困難もチームとして乗り越えたことで、会社全体の結束力がさらに強まったといいます。

次に代表取締役社長の角崎氏からの報告では、
角崎氏は飛び込み営業やトラブル対応に奮闘した経験から、顧客との信頼を築くことの大切さを学びました。
一方で、社員の個性を尊重する必要性にも気づき、「社員皆が自分のようになりたいわけではない」と考えを改め、
個々のやりたいことを活かせる環境づくりを進めました。
金沢営業所での初期の取り組みでは、顧客に叱られる経験もあったそうです。
しかし、その叱責は「もっと頑張れ」というエールであると捉え、さらなる成長に繋げました。
この経験等を基に、営業所が支店となり、地域での事業展開を成功させました。
ロマンを追求しつつ、そろばんの視点を取り入れていく必要性を強く感じていると述べ、
現在は幹部社員と月1回の対話を重ねながら、新規事業や職場環境の改善に取り組んでいます。

角崎氏は森田会長から受け継いだ「人を大切にする理念」を基に、社員と地域のために行動し、新たな挑戦を進めています。
「社員が主役となり、自ら考え、動ける企業」を目指していくと語りました。
報告を踏まえた『何のための事業承継か？』のテーマでのグループ討論では、
「社員、取引先、地域、そして自分のため」という多角的な視点が重要。
事業承継は、企業を続けるという大前提のもとで考えるべきだという意見が印象的でした。
他にも、「目に見えないもの、つまり理念や想いを引き継ぐには時間をかけた準備が必要」という意見。
「社員や顧客の信頼を大切にし、地域社会に貢献する企業が理想」という意見が多数挙がり、企業理念がその基盤となるとの共通認識が生まれました。

森田会長の「ロマン」を中心に据えた経営の大局的視点と、角崎社長の行動力と営業力を活かした現場での実践。
この両者が融合することで、㈱モリタは今後も地域と共に発展していくと感じました。
事業承継は単なる引き継ぎではなく、理念や想いを未来に繋げる挑戦です。分科会を通じて、社員や地域と一体となり、
企業として新たな価値を生み出す重要性を改めて学ぶことができました。

（記録：長崎順子会員／バルーンアートスタジオブルーラビット／城北支部）