新川支部
星名 秀一 会員
星名 秀一(2007年入会・新川支部)
株式会社ホシナパック 常務取締役
〒936-0825富山県滑川市安田200-13
TEL: 076-476-1855 / FAX: 076-476-1851
業種: 紙器製品企画・製造・販売、医薬品・化粧品包材印刷・製造・加工
女性が働きやすい会社づくりを目指して
事務局が企業訪問してきました
(株)ホシナパック 常務取締役 星名秀一さん(新川支部)にお話しを伺いました。
星名産業、ホシナパック、ホシナハイテック、クリエートスターの4つの事業体からなるホシナグループは、他業種にわたる、組立・加工・検査・梱包作業に特化した企業です。その中でも、(株)ホシナパックは医薬品・化粧品包材に特化した製造・加工を手がけています。
同友会の共同求人委員会、共育委員会活動に参画される同社は、社員数400名を超える企業であるのに、星名さん始め、臼沢さん、小暮さんの新入社員さん達に対する真剣体当たりの社員教育の姿には、どこか家庭的な人間らしい温かさが感じられ、共育委員会を担当する私としてはその理由をぜひお聞きしてみたいと、今回インタビューをさせて頂きました。
会社沿革
1985年に創業し、1986年に(有)星名産業を創立しました。創業者は現・代表取締役である私の兄、星名照彦です。25歳の時に創業しました。車の電装部品製造や、車の部品検査・梱包の仕事から始まった会社で、人と人との繋がり・ご縁によって、1988年に大手印刷会社との取引が始まったことをきっかけに、そこから現在のような医療・医薬品・化粧品向けパッケージの印刷、包材製造がスタートしました。
当時は主に手内職中心の仕事を請け負っていました。その頃は歯磨き粉などのチューブはほとんどがアルミ素材でできており、出荷時チューブが折れ曲がったりすることでチューブが破れてしまうという問題がありました。そこで、商品の梱包が見直され、一気に需要が高まったんです。他にも、包装ツールとして、より付加価値をつけるために箱にシールを貼る作業なども行なっていました。
女性が働きやすい会社づくりを目指す理由
平成30年6月に「女性が輝く元気企業とやま賞」を受賞することができました。現在男女比2:8で、女性管理職は11名。この受賞をきっかけに、富山県が主催する「富山のしごと・くらしアピール事業」や中部経済産業省の「ものづくり女子の活躍応援サイト」、東京商工リサーチが発行する学生向け就活本に優良企業として取り上げていただくなど、おかげさまで有難い評価をいただけるようにまでなってきています。女性が働きやすい環境を目指してきたのは、創業時から変わらない社長の思いがあるからです。
社長が創業した当時、パートと言えば9時から16時など働く時間が決まっているのが当たり前で、子どもがまだ小さい女性は、働きたくても働けないという時代でした。そこで、もし働き方をもっと自由にすれば、優秀な女性がたくさんきてくれるのでは?と考え、当時まだ珍しかったフレックスタイム制度を導入しました。そこから現在も変わらず子育て世代の女性が働きやすい職場環境を追求し、社員・パート関係なく、家庭円満を第一に考えて働ける会社づくりを目指しています。
兄弟の絆を超えて
私が入社した経緯をお話しします。
私はもともと車の整備士になりたかったんです。ですが家庭の事情で高校を卒業してすぐ、祖父の会社の手伝いをすることになりました。ですがどうもその仕事が性に合わず、そのうち居酒屋のアルバイトを始めました。板前にも挑戦したことがあります。石油会社に務めたり、長距離ドライバーをやってみたりと職を転々としていました。
兄は会社を興しても身内は会社に入れないという方針だったのですが、当時、社長の右腕として社員数名と、あとは全員パートさんで40名程度おりましたが、受注量に対してかなりの人手不足になっていました。私が職を転々としている時も、社長から7回くらい「会社にきてくれ」と言われていました。兄弟で仕事はやりたくないと断り続けたのですが、さすがに7回目で折れ、かれこれ約27年続いています。兄の会社に入ると決めた時、これからは兄弟の絆を超えて"社長と部下"として生きるという覚悟を決めました。
富山同友会障害者問題部会を立ち上げられた故・山下順一は私達兄弟の叔父にあたります。思い起こせば、1991年に「コーセルの飴氏が報告されるから」と言われて叔父に連れられて行ったのが、中小企業家同友会の第12回定時総会でした。それが同友会との最初の出会いです。
社員の自主性発揮で、やりがいアップ、売り上げアップ!
もともと検品や箱組み立てなどの手仕事を中心に請け負っていましたが、そこから工程を逆にたどるように、紙折り、裁断、印刷と徐々に仕事の幅を広げていくことができています。これも全て、人と人との繋がり・ご縁のおかげで、周りに助けて頂きながら今日に至っています。
2008年に起こったリーマンショックの影響は大きく、グループ全体で大幅売り上げダウン、経営存続の危機も経験しました。
そういう厳しい経験を経て、取り入れた仕組みが「日次採算」です。弊社はパート社員も含め全社員がその日の売り上げを把握しています。各現場に「日次採算表」を張り出すことで、経費と売り上げを見える化しました。弊社はワンマン経営体質ではありませんが、その仕組みを導入するにあたっては社長の号令が必要でした。最初は抵抗感を持つ社員もおりましたが、絶対に会社のため社員のためになる!と社長が腹をくくって推し進めてくれたおかげで、少しずつ社内の雰囲気も変わってきました。
特に、リーダーの役割意識と、社員の自主性、チームワークに変化がありました。各現場で「どうすれば黒字になるかね?」「生産効率をあげるためにもっと何かできることあるんじゃない?」という話ができるようになったことで、お互いに助け合い、より良い仕事づくりに取り組む姿勢が生まれてきています。トップダウンからボトムアップで、現場から数値をあげてもらうような仕組みになってきたことで、営業面でも良い影響が現れはじめています。私たちは下請け会社ではありますが、自信を持って価格交渉ができる会社になってきています。
女性パワーで社員教育
約16年前から高校求人を始め、2007年に同友会に入会してからは毎年同友会の合同入社式・新入社員研修会に参加しています。近年、高校から大学進学が当たり前になってきたことで、高校求人だけでは難しくなってきた時、同友会の共同求人委員会活動を通じて、専門・短大・4大生の採用にも挑戦しました。学校との繋がりができ、今ではありがたいことに先生からの勧めで弊社に応募してきてくれる子もいるぐらいです。
採用時に先生から「素行に少々問題があって...」という相談を受けるような子、発達障害のある子、遅刻・欠勤の多い子、色々な若者が働いてくれています。なぜそういう特徴を持った子達が働けるかというと、先ほど述べた通り、弊社は子育て世代の女性社員が中心です。まさにお母さん的女性パワーで、なかなか仕事を覚えられない若手社員に対してはノートに書いてもらったり、ホワイトボードをつかって絵を描いて説明したり、いろんな工夫をしてくれています。
諦めずに丁寧に指導してくれる現場の苦しさは痛いほどわかりますし、どれだけがんばっても辞めてしまう人はいます。しかし今の世の中、最初からなんでもできる学生を探してもどこにもいません。最初はできなかったけど、できることが一つずつ増えていく彼らの姿から、私達も学ぶところは多いと考えています。
最後に
工場を見学させていただいた時も、女性パワーは随所に感じられました。すれ違う度に「いらっしゃいませ!」とマスク越しでも笑顔とわかる表情で挨拶をしてくださり、明るく元気な職場であることは一目瞭然。新人社員は緑色の帽子をつけ、その側にはベテラン社員がついてすぐにフォローできる体制がありました。キビキビと忙しく立ち回る社員さん達を見ていると、仕事に対する誇りが伝わってくるようです。
新入社員の成長を、母のような温かい目で見守ることのできる会社。その基盤には、創業時から変わらない、家庭円満を両立できる女性が働きやすい環境づくりへの思いと、全社員に数値を見える化することで生まれた社員の自主性がありました。
お忙しい中貴重なお時間、ありがとうございました!
(訪問日:2019年1月28日(月) 文:事務局 河崎)
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