高岡支部
荒木 真 会員
荒木 真(2012年入会・高岡支部)
社員と共に創る経営指針書。思いやりの連鎖が人間的成長を育む
事務局が企業訪問してきました
ビルド計画株式会社 代表取締役 荒木真さん(高岡支部副支部長)にお話しを伺いました。
「中小企業家同友会は、おせっかいな経営者団体。この会には、耳に痛いことをズケズケと言ってくれるありがたーい仲間がいます。」と仰る荒木さん。経営者は孤独...そう悩む方が多い中、荒木さんは同友会と出会い、本音で経営課題を語れる仲間ができ、経営者としての姿勢を見つめ直すことで、社員との関わり方が変わってきたそうです。
図面を描くのは「ものがたり」
砺波商工会議所主催の「となみ産業フェア・パワー博」に2回、同友会主催の「夢づくりフェスタ」にも3回出展しました。そういったところに参加することで、自社の魅力、製図という仕事の魅力をどうすれば伝えることができるか、社員達が主体的に考えてくれるようになったと感じています。
私は図面を描くのは「ものがたり」だと思っているんです。ものづくりに携わる人は図面から完成した姿、工程、金額などが読み取れます。描き手に求められるのは、正確さはもちろんですが、読み手にとって自然と細部まで想像が膨らむかどうかを意識しながら思いやりをもって描くことを大切にしています。
弊社は家の窓やドアなどの製図が中心で、建材自体を設計することもあります。また、施工図や、取り扱い説明書に載せる図なども描いています。
例えば取扱説明書のお仕事は、メーカーさんから「こういうものを、こんな風な順番で、こんな感じで組み立てられるように」というざっくりとした下書きをもらい、スタートするわけです。施工手順がイメージしやすいように、読み手にとってわかりやすく工夫するところが、弊社の腕の見せ所。今はコストカットを求められるのであまり強く言えないんですけど、余白は読み手に対する思いやりなんです。弊社は女性が中心の会社なのですが、女性はレイアウトのセンスがある人が多いので、そういう余白をうまく使って、読みやすくわかりやすい図を描いてくれています。
機械設計をされる方は、設計の必要最低限のルールを把握しつつ、自分のアイデアを盛り込みながら設計していきます。だけど、ひとつひとつの展開図を描くのははっきりいって、めんどくさい仕事なんですよね。そこに弊社のニーズがあるんです。(部品ひとつに数十ページもの図面が...!!)
設計マンの頭の中にあるイメージを、私達が蓄積してきた経験や知識をもとに、かたちにしていく。そのためには、お客様とのコミュニケーションが命です。一見、黙々とパソコンに向かっている無機質な仕事かと思われがちですが、実はヒューマンスキルが求められる仕事なんです。その点弊社は社員に恵まれていますね。
社員と共に創る経営指針書
現在社員数20名(男性9名、女性11名)です。社長に就任し、8年目に突入しました。2012年に同友会に入会し、同年の第18期経営指針を創る会を受講しました。受講生として、私はしっかりと出来ませんでした。受講後も、うまくいったという実感はありません。他の方のようにこれといって実践もできてはいないのですが、毎年経営指針書の見直しだけは継続しています。
弊社は今期で29期になりました。経営指針書は外部環境と内部環境の両面を意識した内容になっています。
まず外部環境について。
弊社は本社勤務の社員と、メーカーさんへ常駐業務している社員が半分半分の比率です。社員達が業界研究のように、お客様の特徴を詳細にとらえ、指針書に盛り込んでくれています。鮮度の高い外部環境情報が集まってきますので、単なる数字ではわからない部分まで想像し、手を打つことができます。
次に内部環境について。
弊社のいう内部環境とは、社員一人一人の良いところを見つける、というものです。これは経営指針を創る会を受講してすぐの期から取り組み始めました。期を重ねるごとに良いところが増えていく仕組みです。ある社員の、「自分の良いところはわからんけど、周りの人のことならわかる」という言葉がきっかけです。
(内容はもちろん企業秘密ですが、"荒木社長"の内部環境だけこっそり見せていただきました。お〜、良いところびっしり!!これは嬉しいですね(^^))
みんなを巻き込み、みんなで同じ方向を見る
旧・呉西支部の新しい仕事づくり委員会の取り組みからヒントを得て、社内で"新仕事プロジェクト2017"というものを取り入れました。仕事に関係有り無し問わず、プライベート問わず、コスト問わず、設備投資金額問わず、とにかく自由に自分が興味あることを企画してみてと投げかけたら、全員が書いてきてくれました。
企画内容は、毎月のミーティングで発表してもらうことになっていて、名刺のロゴとか、雑貨、食堂の企画など、ジャンル問わずで非常に面白い内容ばかりです。この企画は経営指針書にも載せています。経営指針書で伝えたいメッセージが社員に浸透するまでには時間もかかるし、社員を巻き込む仕掛けとして、何かできることはないかと常に考えています。新仕事プロジェクトもその仕掛けのひとつです。
何よりも大切なのは、人間的成長
最近では同友会の「働き方改革勉強会」に参加し、講師の中島社労士が使われていたカルタを社内でもやってみました。やってみると、社員それぞれ思うところがあって、改善点を出し合いました。働き方改革については毎月社労士さんと打ち合わせをしながら積極的に進めていますが、やっぱり社員からみた改善点はまだまだあるのかと気づかされました。
一番最近入社した社員で1年2ヶ月が経ちました。全くの未経験ゼロスタートでも、キャド研修から入り、週単位で教育担当者を変えて社員教育しています。スキルを身につけることももちろん大切ですが、先輩から人間性の部分を学び、お互いに成長し合うことが何より大切です。
経営理念の話をするのは仕事や会社に慣れてもらってから、ですね。1年くらい経ちますと、一緒に経営指針書づくりに携わってもらいます。採用時には主にこれから会社でどんな風に成長できるか、今後のステップアップの流れを話しています。
(目が疲れやすい仕事なため、少しでも癒しをと、緑が随所にちりばめられたオフィス↓↓)
図面を描くことが目標ではなく、お客様の隠された要望にいかに応えられる人間になれるか、ということを目標にしてもらいたいです。どうしたら目の前の人が喜んでくれるのかを常に考え、思いやりをもって仕事をすることが大事ですからね。
「好き」という気持ちでいる限り、工夫をしたり、壁を乗り越える原動力になったりすると思います。仕事だけでなく、プライベートでも「好き」という気持ちを持ち続けてほしいです。社員に対しても、この会社で集ってみんなと出会えたのは奇跡だと思っています。だからこそ、お互いを受け入れ、理解し合いながら助け合っていきたいです。
(デスクから離れ、ちょっと一息入れるのにぴったりな明るい休憩スペース↓↓)
中小企業家同友会の魅力"おせっかいパワー"
正直なところ、ここまで中小企業家同友会にどっぷり浸かるとは思わなかったです(笑)
同友会の魅力はやっぱり"おせっかいパワー"。老若男女問わず、同友会を続けてこられている人は経営者としての見方が全然違うなと感じます。私自身、まだまだ経営者としてブレることもありますが、同友会で学ぶ内、自問自答の繰り返しが身についたことで、ブレ幅が少なくなってきたと実感しています。
とにかく、自分を見つめ直す機会が同友会にはいっぱいあるんです。こういうことを考えなくちゃだめなんだよなーとか、あー・・経営者としてちゃんとせんなんなーという反省をさせてくれるところです。でも、がんじがらめの息苦しさではないですよ。
同友会は、新卒採用とか、社員教育とか、どこから入ってもいいと思いますが、入会の1番の目的は"理念経営"じゃないでしょうか?同友会入会を迷っている方がもしいらっしゃったら、まずは興味あるところから同友会に参加してほしいと思います。登山と同じで、道は決まっていないけど目指すところは一緒、そんな感じですね。
私自身高岡支部の役員として、会社の組織づくり同様、入会間もない新会員さんに同友会の楽しさを早く感じてもらえるような仕掛けを考えていきたいです。
最後に
荒木さんが役員を務める高岡支部では「同友会運動と企業経営は不離一体」という言葉をよく耳にします。まさに荒木さんはその言葉の実践者だと感じました。荒木さんの思いやりが社員に伝わり、社員の思いやりがお客様に伝わり、果ては思いやりが溢れる地域づくりにつながっていく、そんな連鎖が目に浮かびます。
お忙しい中、貴重なお時間をありがとうございました!
(訪問日:2019年1月29日 文:事務局 河崎)